妄言
ありがとう
嗄れた声でそう吐き出した口は閉じ、握っていた手から力が抜けていく
「団、長…?」
彼女は呼びかける、返事はない
「団長…嘘、だよね? いつもの冗談、だよ、ね…?」
薄々分かっていた、世界花の加護を受けた花騎士と違い、彼は時間の流れが[普通]なのだ
自分よりも早く彼は逝ってしまう、しかし幼い頃に両親を亡くした彼女はその現実を受け入れたくなかった
「…ねえ、団長? こんな時間に寝てたら夜寝れなくなるよ? 団長、起きて?」
嫌だ
脳が目の前の光景を拒絶する
嫌だ
嫌だ
「団長…ダメだよ、こんなところで、死ぬなんて」
勘違いから始まった花騎士と団長の関係、彼のお陰で確執は消え、いつしか彼女の心は惹かれていった
「貴方を殺す、なんて…照れ隠しで、言ってた、だけだから…もう、そんな、こと、言わない、から…っ」
握っていた手がすり抜けベッドへ落ちる
もうその体が動くことなどなく
「だからっ、私を、一人、にっ、しないで、よぉ…っ!」
部屋の中は一人の女の子の泣き叫ぶ声だけが響いていた