妄言
「ええと…こうかしら、重くない?」
彼女ーーサフランはベッドに脚を投げ出し座るこちらの背に腕を回しながら膝の上に座ってきた。
重いとは感じない、むしろ体格の割に軽いと思ったくらいだ、と伝える。
「ほんと? ふふっ、お世辞でも嬉しいわ」
彼女はこちらに身を預け、しっかりと抱きついてきた。
体勢が崩れぬよう彼女を軽く抱え座り直す。
その時何も考えていなかったせいか彼女のお尻に触れてしまい、
「ひゃっ、もう団長さんってば…座り直す為とは言えあんまり女性のお尻を鷲掴みにしちゃダメよ?」
叱られてしまった。
「でも…ちょっとだけ気持ちよかったから、許してあげる」
再び抱きついて来た彼女はすんすんとこちらの匂いを嗅いでいく。
肩、首、喉元、胸元。
「団長さんの匂い…なんでかしら、すごく落ち着くの。 だから…好き」
目の前のサフランが上気した顔と少しだけ潤んだ目でこちらを見つめる。
その時、意識したせいかふわりと感じた葡萄の匂い。
ああ、そうか、だから彼女はこんなにもーー
「団長さん、好きよ、愛してるわ…」
目を閉じゆっくりと近づく。
ワインの匂いが鼻を突き抜けた。